「知っている」を「できる」に変える3つのステップ

聞き方を変えると答えられなかったり、学んだ知識を他の事象に活用できなかったり。保護者の「うちの子は応用力がなくて・・・」、小学校3年生~4年生で勉強が難しく感じる「9歳の壁」。

これらのの理由の一つとして、抽象的な内容が増える中で、テストなどの問題の解き方は覚えていても、背景にある原理・原則を理解できていない(抽象化、具体化、概念化などが足りていない)ことが考えられます。たとえば、割り算の概念(割り算が何をしているのか)を理解していないから、文章題で割る数と割られる数を逆にしてしまったりします。また、速さや単位(km/時など)の意味が理解できていないから、「みはじ」といった覚え方をしていたりします。

子どもたちも教えられることに慣れてしまって学びが受け身となってしまったり、考え方(プロセス)よりも正しい答えだけを求められることが多いから、答えがあっていればいいというマインドになってしまっているのかもしれません。

推論と試行錯誤

では、どのようにすれば、学んだ知識を活用・応用できるようになるのでしょうか。これには、言葉をどのように習得するのかを知ることが役に立ちます。ここでは細かい説明は省きますが、言語を習得する上でカギとなるのはヒトだけが行う「推論」です。推論はあくまでも仮説ですので、試行錯誤しながら修正されていきます。

【子どもが言葉を学ぶ例】

例1) 豆腐にかける調味料が「しょうゆ」だと知っているが、「コンデンスミルク」という言葉を知らない子どもが、食べ物にかけて味をつける液体を「しょうゆ」というのだろうと推測して、イチゴを食べるときに「イチゴのしょうゆをちょうだい」と言う。

例2) ネコを「ワンワン」と呼んでいた子どもが「ネコ」という言葉を知ると、ネコは「ワンワン」ではないことに気づき、「ワンワン」の範囲を大人の「イヌ」の範囲の近くなるように修正する。

3つのステップ「みつかる」「わかる」「ためす」

ロボット教室で、「組立図通りに組み立て、プログラム例通りにプログラミングし、秒数やモーターの回転方向/速度などのパラメーターを変更する」。確かにロボット制作、プログラミングを体験し、「知っている」状態ではあります。しかし、学んだことの概念を理解して他の事象に応用できるかどうかは別です。

テディスでは、ロボット制作やプログラミングの学ぶテーマごとに、「みつかる」「わかる」「できる」の3つのステップで理解を深めながら進め、「知っている」を「できる」に変えます。

  1. 「みつかる」: 見本を見てモデルを作り、実験を通してロボットに関わる原理・法則・しくみに気づきます。
  2. 「わかる」:身の回りにある道具や機械、プログラミングでは取り組みやすいミッションで、学んだ原理・法則の活用事例を知り、理解を深めます。
  3. 「できる」:オリジナルのロボット制作で学んだ知識を実際に活用・試行錯誤して、実際に使える知識とします。
みつかる

はじめに、学ぶテーマに関して、知っていることや実際に見たり聞いたり・体験したことなど、自分の考えを自由に話し合います。ここでは、正しいか間違っているかは一切問われません。また、必要に応じて自分たちでさらに調べます。

テーマへの興味や関心が高まったところで、モデルのカードをよく見て、正確に制作します。プログラミングでは、クラス全員で話し合いながら動作を確認するためのプログラムを作ります。

次に、制作したモデルは何をするものなのか?どのように動かすのか?自分の手と頭を使った遊び(実験)を通して、規則性や法則性、特長、良いところなどを発見します。プログラミングでは、新しく学ぶ要素について、どのような意味があるのか、何ができるのかなど理解するために必要な事項を実際にロボットを動かし動作を確認しながら発見します。

この段階で子どもたちから聞こえてくる言葉は「あっ!」「えっ!とか「へぇ~」です。

みつかるのイメージ
わかる

身の回りにある道具や機械に学んだ原理・法則がどのように活かされているかを様々なモデルを制作して理解を深めます。どこに原理・法則が使われているかをしっかりと確認した後、制作したモデルを目的に沿って改造したり、いじくり回すことで理解を深めます。

最初に制作するモデル自体は完成されたものではなく(不完全な部分があるなど)、改良できる部分を残してデザインされています。プログラミングでは、新しく学んだ要素を活用できる取り組みやすいミッションに挑戦して様々な活用方法を試します。様々な活用事例をしることで、そこから共通点を見出し、学んだことの概念を少しずつ理解し、修正していきます。

この段階で子どもたちから聞こえてくる言葉は「あぁ、そういうことか!」です。

わかるのイメージ
できる

理解が深まってきたところで、問題解決型アクティビティなどに挑戦します(時にはグループで課題に挑戦します)。目的に合うようにひとりひとりが設計を考え、手を動かしてロボットを組み立てていきます。強度が足りなかったり(構造)、思っていたように動かなかったり(動くしくみ)、一度で成功することはほとんどありません。講師は教え込むのではなく、子どもたちが試行錯誤の中で自分自身の力で答えが見つかるようにサポートをします。うまくいかない原因を探し出し、試行錯誤しながら問題を修正していきます。プログラミングでは、ロボコンを題材にしたミッションにチャレンジして、試行錯誤して学んだ内容を実際のプログラムで活用できるようにしていきます。この作業を通して、「知っている」が「できる」に変わります。

ここまで来ると、言葉はなくとも子どもたちの顔は達成感と自信に満ち溢れています

できるのイメージ

試行錯誤して学び、学び方も学ぶ

自分の知識や経験から、似ていること・同じことから推論して実際に試してみます。すると思っていたようにいかず、「えっ?」「あっ!」「そうきますか・・・」など、自分の仮設を修正する試行錯誤の中で「あぁ、そういうことか」と腑に落ちる。学びにおいて重要な試行錯誤のプロセスが抜けてしまうと、知識は表面的な理解にとどまり、他の事象に活用することができません。「知っている」だけで終わってしますのです。

また、推論と試行錯誤を繰り返す学びは、主体的な学び方を習得することにもつながります。幼少期の場合は、推論の元となるのは体験を伴った知識です。特に五感を使った体験は記憶に残りやすく、幼少期の学びにおいて体験が重要視されている理由が分かりますね。

最後に、「知っている」を「できる」に変えるポイントを整理します。

  • 物事の本質を理解する(概念化する)上で大切なのは、推論と試行錯誤する学び方
  • 幼少期では、体験を伴った学びが知識を増やしていくことにつながる
  • 教わるのではなく、推論し(仮説を立てる)、試行錯誤しながら知識(概念)を修正していく
  • 大人が適切なタイミングで適切な問いかけ・サポートをすることで、子どもの成長を促進できる
学びの源「好奇心と探究心」を育てる多くの子どもたちと関わってきましたが、主体的に学び、こちらが驚くほどスポンジのようにどんどんと吸収していく子どもには共通するものがありま...