目的、年齢ごとに適したロボットプログラミング教材
現在、多くの子ども向けプログラミング教材が存在し、どれを選べばよいのか迷ってしまうのではないかと思います。今回はロボットプログラミング教材に注目し、目的、年齢やスキルレベル毎に適した教材をピックアップしてみたいと思います(個人的な好み・志向が含まれていますので、ご判断はご自身でお願いいたします))。
子ども向けの教材は「勉強」と感じずに「遊びながら」学習できるように工夫されている一方で、遊びから学びへとつなげていけるかどうかも重要なポイントとなります。
また、小学高学年以降に適したロボットプログラミング教材では、将来的にロボットコンテスト出場を考えている場合には、ハードウェアの精度・設計の自由度・拡張性なども重要な要素となります。競技に適していない教材を選択してしまうと、ロボットコンテストではそれだけで不利となり、場合によっては買い直しとなる可能性もあります。
小学低学年~中学年向け
この年齢では、ロボットプログラミングの基礎であるモーター制御、センサーを使った制御の基礎と、順次処理、簡単なループと単純な条件分岐を学習することができれば十分です。ただし、せっかくロボットで学ぶのですから、ロボットを動きを作り出す構造や機構を学ぶという点も踏まえて、車輪移動型だけでなく様々な装置に作り変えることのできる(何度でもハードウェアをつくり直せる)ブロックタイプがお勧めです。
レゴWeDo2.0(販売終了)
小学低学年向けWeDoの第2世代。スマートハブx1、モーターx1、モーションセンサー(赤外線センサー)x1、チルトセンサーx1。
レゴオリジナルのビジュアルプログラミングソフトは、アイコン型で小学低学年の子供でも理解しやすく操作性がよい(Scratchでもプログラミング可能)。
レゴSPIKEベーシック
小学低中学年用の教材。スモールハブx1、モーターx2、カラーセンサーx1、カラーライトマトリクスx1。
セットのギア・回転系パーツが無くなるなど、エンジニアリング要素の低下が残念。レゴオリジナルのビジュアルプログラミングソフトは、年齢やスキルに合わせてアイコン型とScratchベースの2種類から選択可能。
アーテック系(学研、KOOV含む)
パーツ構成はセットにより様々。マイコンボードスタディーノ、モーター、各種センサ。
あらゆる方向に挿し込める立体型ブロックが特徴(固くて外しにくい)。イメージを形にしやすい一方で、将来的にロボットの機体設計にはつなげにくい。プログラミングはArduino互換のスタディーノを専用ソフトでプログラミング。
mBot
初心者から初中級レベルまで幅広く対応する教材。メインボードx1、モーターx2、赤外線フォトセンサーx1、超音波センサーx1。
車輪移動ロボットに限定すれば、価格・性能のバランスは良い。ロボット機体の拡張性が低いのが難点。Scratchベースのビジュアルプログラミング。
micro:bit系キット
micro: Maqueenのように、micro:bitをメインボードとしてロボットプログラミングの基礎が学べるキットが様々なメーカーから販売されている。パーツ構成も様々。
手軽にロボットプログラミングに挑戦できるが、車輪移動型が多く、機体の拡張性は低いのが難点。makecode(micro:bit専用プログラミングソフト)、またはScratchでプログラミング(できる内容はキットと拡張ブロックの提供状況による)。
小学校低学年用としてのロボットプログラミング教材選択のポイントは、
- プログラミングソフトウェアの扱いやすさ
- 様々なモデルへ変更できる拡張性
- エンジニアリング要素も学べる
この点、レゴWeDo2.0がお勧めですが、2022年3月末で販売終了となってしまいました。後継のSPIKEベーシックはギアパーツがなく、レゴエデュケーションの教材からはエンジニアリングの要素がなくなった感があります。レゴ好きならSPIKEベーシック、車輪移動型ロボットでロボットプログラミングの基礎を学べればよいなら、価格と性能のバランスの良いmBotもおすすめ。
小学高学年以降
小学高学年以上の場合、テキスト言語への移行、ロボットのハードウェアにどの程度の精度・設計の自由度・拡張性を求めるかによって選択肢が異なります。
ロボットコンテストへの出場を考えている場合、キットの仕様を確認し、目的に沿っているかをしっかりと確認する必要があります。価格も求めるスペックによって大きく異なってくるのもこの年齢層を対象とした教材の特徴です。安易に価格だけで選んでしまうと、後で買い直すことになりますので注意が必要です。スペック等についてよく分からない場合には、ロボット、プログラミングの知識のある人、ロボットコンテストに参加している教室であれば講師に相談した方が良いでしょう。
レゴマインドストームEV3(販売終了)
インテリジェントブロックx1、Lモーターx2、Mモーターx1、タッチセンサーx2、カラーセンサーx1、超音波センサーx1、ジャイロセンサーx1。
2022年7月末で販売終了となったが、サードパーティ製パーツも充実しており、マイコンボード追加による拡張性も高いこともあり、ロボコン会場ではいまだ現役。当初はSPIKEプライムの上位として存続予定だったが予定変更により終了となってしまったのが残念。専用ソフトによるビジュアルプログラミング、C、Pyhon、JAVAなど様々な言語にも対応可。
レゴSPIKEプライム
ラージハブ(ジャイロセンサー内蔵)x1、Lモーターx1、Mモーターx2、フォースセンサーx1。カラーセンサーx1、距離(超音波)センサーx1。実質EV3の後継。教育用ロボットプログラミング教材としては十分な性能。しかし、現時点ではサードパーティ製パーツは少なく、またポート数の少なさ等、ロボットコンテストのベースマシンとしてはEV3には及ばない。ビジュアルプログラミング、Python言語に対応。
アーテック系(学研、KOOV含む)
ビジュアルプログラミングの他、PArdunoに対応。その他、小学低中学年向け教材の欄を参照ください。
mBot
ビジュアルプログラミングの他、Python、Ardunoに対応。その他、小学低中学年向け教材の欄を参照ください。
micro:bit系キット
ビジュアルプログラミングの他、JAVAに対応。その他、小学低中学年向け教材の欄を参照ください。
自作(Arduino、ESP32、STM32など)
ロボットコンテスト会場でよく見かけるマイコンには、Arduino、ESP32、STEM32、Teensyなどがあります。いずれの場合でも、テキスト言語、電気・電子回路、機構・構造など、幅広い分野の知識が必要となります。また、完成されたキットと異なり、予期しないトラブルが発生する場合もありますので、知識と経験のある指導者が必要となるでしょう。
ロボットコンテスト出場を考えている場合は、EV3一択でしょう(残り少なくなっているようですが、まだ在庫はあるようです)。出場する競技に寄りますが、動作量に正確性が求められる場合には、モーターの回転角度を取得するためにエンコーダーが必要となります。安価なロボットキットのモーターにはエンコーダーはほとんどの場合付いておらず、候補から外すことになります。
したがって、小学校中高学年用としてのロボットプログラミング教材選択のポイントは、以下の点を検討し、それによって適している教材は異なり、価格も大きく違ってきます。
- ロボットコンテストに出場予定があるかどうか(基本仕様、精度、拡張性)
- テキストプログラミングの学習を予定しているかどうか(プログラミング言語への対応)
- ロボット制作、プログラミングについて聞ける人が身近にいるかどうか
まとめ
小学校低学年のお子さまの教材は、年齢にあったものを選べば大きく間違うことはない思います、年齢に合わない教材を選んでしまうと、理解が難しく感じ、ロボット制作やプログラミング自体をつまらないものと感じてしまうリスクがあります。これでは本末転倒ですね。
小学中高学年のお子さまの教材を選ぶ上では、ロボットコンテスト出場を予定しているかどうか、テキストプログラミングを学ぶ予定があるかなど、先々の考え方によって、選ぶ教材も価格も大きく変わるということです。言い換えると、求めている機能、必要としている機能がある程度理解していなければなりません。この点、身近にロボット制作やロボットプログラミングについて、聞ける人が身近にいるとよいでしょう。ある程度のレベルを目指そうとしている方で身近に詳しい人がいない場合は、自分で試行錯誤するのも一つの楽しみですが、こうした知識・ノウハウを持っている教室に通われるのも一つの方法です。