アフターEV3のロボット・プログラミング教材
テディスのロボット・サイエンスコースのメイン教材であるレゴマインドストームEV3ですが、ご存じの通り、販売が2021年7月で終了となりました。レゴエデュケーションのアナウンスによると、今後は2020年夏に発売されたSPIKEプライムに統合するとのことです。
レゴSPIKEプライムはロボット・サイエンスコースのメイン教材となり得るのか?つまりテディスが毎年出場しているロボカップジュニアのレスキュー競技に対応できるのか?レゴ以外のロボット・プログラミング教材はどうなのか?探ってみたいと思います。
EV3とSPIKEプライムの比較
マインドストームEV3の発売開始は2013年と10年近く経過しています。販売終了は理解できる年数ですので、問題はSPIKEプライムがEV3を置き換えることができるのかということです。私個人としては、SPIKEプライムはEV3とWeDo2.0の間を狙った教材として開発されたが、販売後にEV3と統合することになったのではないかと感じています。理由としては、EV3と比べて拡張性が低いこと、ブロックのカラーやソフトウェアのプログラム自動保存など、EV3よりも低年齢の子供を対象としていると思われるところがあります。
いくつかの観点からEV3とSPIKEプライムを比較してみたいと思います。
本体(コントローラー)
EV3 | SPIKEプライム | |
---|---|---|
システム | ARM9 300MHz | 100MHz M4 320 KB RAM |
OS | Linux | MicroPython |
入出力ポート | 入力x4、出力x4 | 入出力x6 |
センサー | タッチ、カラー、超音波、 3軸ジャイロ | 6軸ジャイロ (3軸加速度+3軸ジャイロ) |
大きさ | 75W X 115D X 45H(mm) | 56W x 88D x 32H(mm) |
重さ | 210g | 148g(バッテリー取付時) |
まず良い点です。EV3のインテリジェントブロックと比べてSPIKEプライムのラージハブがコンパクトで軽量なところでしょう。ハードウェアの設計にを高めてくれそうです。
一方で、入出力ポートの少なさは大きな課題です。ジャイロセンサーを内臓しているものの、移動用モーターx2、アーム用モーターx1、カラーセンサーx2、タッチセンサーx1で6つの入出力ポートを使い切ってしまいます。出力x4、入力x4あったEV3でも、Arduinoと接続して接続するセンサーを増やしたり、自作センサーを接続する必要がありましたが、SPIKEプライムではArduino接続や自作センサーを接続したロボットはまだ見ないですね。これからなのでしょう。
また、EV3にあった液晶ディスプレイが無くなっています(SPIKEプライムは5×5のLED)。子どもが使用することを考えると、ディスプレイはあった方が便利だと思います。
そしてハブだけでなく全体として、EV3が黒と灰色がメインであるのに対して、SPIKEプライムのブロックはカラフルです。個人的にはEV3の方が好みですが、おそらくSPIKEプライムはEV3よりも低学年を狙って設計されたのだと思います。
モーター
教育版EV3基本セットにはLモーターx2とMモーターx1、SPIKEプライム基本セットにはLアンギュラーモーターx1とMアンギュラーモーターx2が入っています。サイズと個数が逆となりました。普通に使用する分には、Mモーターが多い方が使いやすいとは思います。しかし、ロボカップジュニアのレスキュー競技に使用するとなると・・・Mモーターを駆動用としては傾斜路や減速バンプでのトルク不足が心配です。Lアンギュラーモーターを1個追加して、駆動用にLアンギュラーモーターを使用することを前提にトルクなどを調べてみました。
EV3 | SPIKEプライム | |
---|---|---|
トルク | 21Ncm | 8Ncm |
回転数 | 160-170RPM | 135RPM |
SPIKEプライムはコンパクトとなっていますので、レスキュー日本リーグであれば問題なさそうですが、実際に傾斜路や減速バンプを試してみる必要があると思います。SPIKEプライムのアンギュラーモーターは、モーターが回転し始めてから何度回転したか(相対位置)だけではなく、原点から見てどの位置まで回転しているか(絶対位置)がわかるようになっています。これはアームの動作を制御するにはいいですね。
センサー
基本セットに含まれるセンサーを比較してみます。
EV3 | SPIKEプライム | |
センサー類 | タッチセンサーx2 カラーセンサーx1 超音波センサーx1 ジャイロセンサー(3軸)x1 | フォース(タッチ)センサーx1 カラーセンサーx1 距離(超音波)センサーx1 ラージハブ内蔵ジャイロセンサー(3軸加速度+3軸ジャイロ) |
センサーの構成はほぼ同じです。必要なセンサーは追加すればよいので、レゴ以外のサードパーティ製のセンサーが増えることに期待しましょう。EV3のジャイロセンサーは精度が良くありませんでしたが、SPIKEプライムの本体内蔵のジャイロセンサーはどうなのか、カラーセンサーはレスキュー競技の交差点の緑マーカーをどの程度正確に判別できるかは試してみないと分かりません。
全体的にハブと同様にコンパクトになってハードウェア設計の自由度も高まりそうです。以下、レスキュー競技に限った視点です。
SPIKEプライムのカラーセンサーのLED、眩しいです。明る過ぎではないでしょうか。試してみないと分かりませんが、白と銀の判別できるのでしょうか。ライントレースも白と黒の中間も白判定となってしまって、制御が難しい可能性もあります。
押された力を測定できるフォースセンサーになりましたが、強めに押さないと反応しません。障害物回避の壁トレースの際、反応しにくそうです。押された力を測定したい場面はそれほど多くないことを考えると、普通のタッチセンサーでよかったように思います。
モーターも同様ですが、EV3のようにデバイスとケーブルは別の方がありがたいです。ケーブル破損時など、ケーブル交換だけで済みます。
まとめ
その他のロボットプログラミング教材
レゴ以外にも多くのロボット・プログラミング教材がありますが、ビジュアルプログラミングへの対応、基本性能、拡張性などを考えると他にこれといったものが見当たらないのが現状です。サッカー競技をされている方はどうされるのでしょうか?
2年後までに、サードパーティ製のセンサーが充実し、ポート不足などを補う製品や手法が確立していればよいのですが、現状のままでは当教室ではロボット・サイエンスコースの3年目以降から、SPIKEプライムでは厳しそうです。ない場合には自作も検討しなければなりません。